• 014 月

    イーストンは国家の定義に関してこう嘆いています(David Easton, The Political System: An Inquiry into the State of Political Science, 1953. 山川雄巳訳、『政治体系―政治学の状態への探求』、ぺりかん社、1976年、p122)。

    国家とは何か。ある著者は、国家についてのそれぞれ独自な145個の定義を集めたと主張している(9)。ひとつの述語について、これほど意見が一致しないというのも珍しい。現在の国家概念をめぐる混乱はあまりに大きいので、この問題が、さまざまな形で過去2500年以上にもわたって論じられてきたのだということが、ほとんど信じがたいぐらいである。

    で、国家の概念を使うのはやめてしまえと主張しているのです。国家概念を使うのをやめてしまってはここのサイトは成り立たないので困ります。ただ国家の多義性は常に念頭においておかないといけませんね。

    ちなみに、145個の定義を集めたという論文は

    (9) C.H. Titus, “A Nomenclature in Political Science,” 25 American Political Science Review (1931), 45-60, on p.45.

    だそうです(p120)。私は未見なのでいつかチェックしたいと思います。

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  • 303 月

    史料上の国家の語-日本中世から続き。

    国家の語は、

    江戸時代、一国以上を領有する大名。国持(くにもち)。〔日本国語大辞典〕

    を意味し、「支配者と支配機構(家臣団)」に加え、「さらに支配対象(領国・領民)を包摂するようになった」(国史大辞典)といいます。

    史料上の国家の語-日本近代に続きます(予定)。

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  • 283 月

    史料上の国家の語-日本古代からの続きです。

    鎌倉時代の国家の語は、古代に引き続き天皇を中心とした朝廷を指し、

    日蓮の説く「国家」のありようにしても、常に天皇・朝廷の存在を念頭において観念され、その周辺に凝縮していく傾向をもっている。〔新田一郎『中世に国家はあったか』2004年p4〕

    日蓮は「守護国家論」を著作しています。

    戦国時代には、天皇・朝廷の意味から離れ、「戦国大名の領国」(日本国語大辞典)を意味し、その「支配者と支配機構(家臣団)」(国史大辞典)を指すようになります。朝倉孝景条々など。

    史料上の国家の語-日本近世に続きます。

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  • 273 月
    • 古代では国家は天皇または朝廷を指した(石井紫郎・水林彪「国家」『国史大辞典』第5巻1985年)。
    • 国家の訓は「こくげ」「みかど」(同上)。
    • 律令用語としての国家は天皇を意味した(新田一郎『中世に国家はあったか』2004年)。

    素朴な疑問として十七条憲法の「国家自治」は天皇や朝廷を指してないような気がするんですが、どうなんでしょう。

    史料上の国家の語-日本中世に続く。

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  • 253 月

    ウェブで手軽に引けるCompact Oxford English Dictionary で、stateの項を引いてみましょう。第一項は日本語で「状態」の意味、第二項が「国家」に相当します。

    2 a nation or territory considered as an organized political community under one government.

    訳すと「ひとつの政府のもとで組織された政治共同体として考えられるネイションあるいは領域」です。naitonは国民か民族と訳すことが多いけれど、色々微妙な問題があるので、ここではカタカナでネイションとしています。被治者を含む政治共同体とする点でヴェーバーやラスキらの定義と似てます。

    「ひとつの政府のもとで組織された」のあたりが絶妙な限定条件ですね。地方公共団体は、中央政府と地方政府という二つの政府のもとで組織されているから国家でない、といえるわけです。これは上手い。

    国家イコール政府とする見解に相当するのは第5項です。

    5 the civil government of a country.

    訳すと「一国の文民政府」。civilはmilitaryに対する語で「軍事政府ではない」という意味だと思われます。文民政府と訳しましたが、よく分かりませんので、英語に達者の方に教示いただけたら幸いです。

    日本国語大辞典での国家の定義と同様で、どっちのも意味もあるわけですね。

    このほか、連邦構成州の意味だとか、the States の形で米国の意味だとか、なども載っていますが省略。

    他の英語辞典については、dictionary.com というサイトで引けます。stateの項については次のリンク先で表示されます。http://dictionary.reference.com/browse/state

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  • 233 月

    日本国語大辞典(初版)の国家の項です。

    (1)一定の地域に住む人々を支配、統治する組織。

    これは国家イコール政府とする見解に近いです。

    (2)特に、近代、一定の領土を有し、そこに居住している人々で構成され、一つの統治組織をもつ団体。

    これは芦部のよる国家の定義に近いです。

    (3)特に天皇を指す。… (4)戦国大名の領国。… (5)国と家。… (6)江戸時代、一国以上を領有する大名。

    と続きます。今日は時間が無いので、以上で失礼します。

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  • 223 月

    言葉の定義に関してはまず辞書を引用するのが出来の悪い著作物の定番ですから、ここでも国家の定義について辞書を引いてみます。

    まずは手軽にウェブで引ける国語辞典。gooが提供する国語辞典における国家の項は、三省堂『大辞林』第二版を出典としているようですが、第一項で漢籍にみえる国家の語について、第二項としてstateの訳語しての国家について説明しています。これによるとstateの訳語としての国家は、

    〔state〕一定の領域に定住する人々が作る政治的共同体。…

    と定義されています。

    最高とか独占とか始源とかの限定条件が付いていない点は芦部による国家の定義と同様ですので、「村落も国家かよ」と突っ込みたくなりますが、それはさておき。

    stateの訳語としての国家が一般の民間人を含む政治共同体であると定義されていることは間違いないようです。「国家には一般の民間人は含まれない」という主張は読み取れません。

    ここで引いた国語辞典はしょせん一冊本ですので、もっと権威のある日本国語大辞典なども引いてみましょう。日本国語大辞典での国家の定義の項を作成する予定です。

    また英語辞典をstateを引くほうが手っ取り早いかもしれませんね。これは英語辞典でのstateの定義にて。

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  • 213 月

    ラスキによる国家の定義では、国家と政府を区別することが政治学の基本定理であるとされていましたが、これとは全く逆の見解もあったりします。

    例えば、飯尾潤『日本の統治構造』(中公新書、2007年)。これはサントリー学芸賞という賞を受賞するなどなかなか評判のよろしい本らしいですが、そのp72にこんなことが書いてあります。

    西洋流に国家をステート(state)の訳語であると考えると、その国家には一般の民間人は含まれない。国家は支配機構である政府を意味するからである。西洋の政治学では、国家(state)と社会(society)の二分法をもとに議論を展開することが多い。国家に社会は含まれないのである。

    まさにラスキやヴェーバーによる国家の定義と全く逆で、国家イコール政府としています。なんでこんな見解が存在しているのか、その謎を探っているところです。

    マルクス主義政治学では国家を支配機構と見做すので、マルクス主義政治学が国家イコール政府説の源泉の一つだと考えられます。

    もうひとつは、20世紀の終わり頃、アメリカ政治学界で国家論の復興というムーブメントがあったのですが、そこでいう国家とは国家イコール政府、国家イコール行政府、などと定義されていた、と日本で紹介されることがあります。ここらへんは伝聞のみで原典を確認していないのではっきりしません。いつか確認したら記事にしたいと思います。

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  • 193 月

    現代日本の憲法学で国家はどのように定義されているでしょうか?

    司法試験受験生の間で聖典のように扱われている芦部信喜『憲法』は、冒頭で国家の定義を示しています(1997年新版p3)。

    一定の領土に限定された地域(領土)を基礎として、その地域に定住する人間が、強制力をもつ統治権のもとに法的に組織されるようになった社会を国家と呼ぶ。

    国家を地域社会の一種とする点、強制力を持つとする点ではラスキなどと一緒ですが、芦部による定義の特徴点は、他の論者が付けている最高や独占や始源といった限定条件が見当たらないことです。芦部による定義では、地方公共団体なども国家ということになってしまいそうで心配です。

    芦部本人による定義とは別に、こんな註釈も記載されていかす。

    なお、憲法学では、例えば人権を「国家からの自由」という場合のように、国家権力ないし権力の組織体を国家と呼ぶことも多い。

    ラスキは国家と政府の区別を政治学の基本定理であるとした(ラスキによる国家の定義参照)けれど、憲法学では国家と政府を区別しないこともあるわけです。

    ちなみに、政治学でもラスキの基本定理に反して、国家を政府と同義に扱われることもあります。マルクス主義政治学と、その影響を受けた政治学者に多いようです。これについては別稿にて。

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  • 163 月

    ヴェーバーの国家の定義は、(1)で書いた『職業としての政治』のものが有名ですが、同書は講演を元にしたものなので、体系的な記述ではありません。『職業としての政治』のものほどには知られていないけれど、『社会学の根本概念』では、より体系的に国家は定義されています。以下ヴェーバー『社会学の根本概念』から引用します。

    団体

    社会的「関係」とは、意味内容が相互に相手を目指し、それによって方向を与えられた多数者の行動のことを指す。〔p42〕

    行為が或る明らかな原則に(平均的および近似的に)従っている場合に限って、社会的関係の意味内容を「秩序」と名づけようと思う。〔p50-51〕

    規則によって対外的に制限され閉鎖された社会的関係は、その秩序の維持が、その実施を特に目的とする特定の人間の行動によって保証されている場合、これを「団体」と呼ぶ。右の特定の人間は、指揮者、および、一般に代表権をも有する行政スタッフである。〔p78〕

    団体は社会的関係であり、社会的関係は多数者の行動ですから、団体は多数者の行動ということになります。団体とは、人々の集合ではなく、行動の集合なのです。

    ヴェーバーによる団体の定義の特徴点は、行政スタッフの行動をキーにしている点です。通常の団体の定義では「特定の目的のための行動」とされることが多いのですが、ヴェーバーの団体の定義には目的の要素はありません。

    強制団体

    「強制団体」とは、その実定的秩序が、特定の活動範囲内において、或る基準に合致する一切の行為に比較的効果的に強制されるような団体を指す。〔p85〕

    支配団体

    社会的関係は、当事者の側から見て、「正当なる秩序」の存在という観念によって支配されていることがある。実際に支配される可能性を、その秩序の効力と呼ぶ。〔p50〕

    「支配」とは、或る内容の命令を下した場合、特定の人々の服従が得られる可能性を指す。〔p86〕

    或る団体のメンバー自身が、効力ある秩序によって支配関係に服従している場合、この団体は「支配団体」と呼ばれる。〔p87〕

    支配団体という語感からすると、支配者をメンバーとする団体をイメージしてしまうかもしれませんが、ヴェーバーのいう支配団体は、メンバーは服従する者です。

    政治団体

    或る地域内における支配団体の存立とその秩序の効力とが、行政スタッフによる物理的強制の使用および威嚇によって永続的に保証されている限りにおいて、この支配団体は「政治団体」と呼ばれる。〔p88〕

    『職業としての政治』で「暴力」だったものが、ここでは「物理的強制」に変わってます。

    国家

    政治的強制団体の経営は、その行政スタッフが秩序の実施のための正当な物理的強制の独占を有効に要求する限りにおいて、「国家」と呼ばれる。〔p88〕

    政治団体に正当と独占の要素を加えたものが国家です。正当と独占の概念についてはヴェーバーによる国家の定義(1)を参照してください。

    国家は支配団体の一種であり、支配団体のところで書いたとおり、支配団体としての国家のメンバーは支配者ではなく、服従する者です。

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